定加速航法のロケット力学(特殊相対性理論)(2006/06/19)

 一定の加速をする宇宙船の到達速度を特殊相対性理論で考えてみる。
 ここでは、光速度 C を基準として、速度などを規格化する。
 例えば、速度v=0.5とは、0.5Cを意味するものとし、9.8m/s2も光速Cで割った値で
 扱うことにする。

 ある出発地点から宇宙船内の加速度計で一定の加速度 aが加わるように「等加速直線」
 運動する宇宙船を想定する。
  ある瞬間に出発地点に対して速度 v で「等速直線」運動する系<アルファ>に宇宙船が
 到達したとしよう。
 ここで、宇宙船内の経過時間は τ (秒) として、対応する出発地点の経過時間 t (秒)と分けて
  取り扱う。
  
 宇宙船が系<アルファ>に到達後の非常短い経過時間 dτ において、系<アルファ>内
 での宇宙船の速度はa・dτ である。このとき、出発地点と宇宙船のお互いから見た相手の
 速度はv+a・dτ ではなく、特殊相対性理論の速度合成則に従って次のようになる。

 v(τ+dτ )={ v(τ)+a・dτ }/{1+v(τ)・a・dτ}

  上の式を整理すると
 v(τ+dτ )-v(τ)=a・dτ{ 1-v(τ+dτ)・v(τ) }

 ここで両辺を dτで除して、さらに dτ→0 の極限をとると
 limit dτ→0 { v(τ+dτ )-v(τ) } /dτ=limit dτ→0 a・{ 1-v(τ+dτ)・v(τ) }

∴dv(τ)/dτ=a・{ 1-v(τ)2 }

  上の式は次のように積分できる。
  ∫dv(τ)/{ 1-v(τ)2 }=∫a・dτ

  ∴ 1/2・〔∫dv(τ)/{ 1-v(τ) }) +∫dv(τ)/{ 1+v(τ) } 〕 =∫a・dτ

  ここでx=a・τ+const.とおくと
     1/2・ln〔 { 1+v(τ) }/{ 1-v(τ) } 〕 =x

     ∴v(τ)=(ex-e-x)/(ex+e-x)=tanh(x)

     また、τ=0のとき、v(τ)=0であるから直ちにconst.=0が得られるので、x=a・τ

    従って、出発時から一定の加速度 a(これは宇宙船内で計測される加速度である)で加速を
  続けた宇宙船の対出発地点の速度v(τ) (τ :宇宙船内時間)は下記となる。

   v(τ)=tanh(a・τ) (単位:光速)

    もし1Gで加速した場合は、a=g/C (g=9.8m/s2、C=3×10-8m/sとする)とし、
  宇宙船内時間を τ(秒)で計算する。下にそのグラフを示す。
  

    9.8m/s2で単純に31536000秒(1年)を乗すると光速度(3×108m/s)を超えるが
  上の式では、経過時間がいくら経っても光速度を超えることはない。

 次に一定の加速をする宇宙船の宇宙船内時間 τ と出発地点の時間 t の関係と到達距離 L を特殊相対論で
 考えてみる。
 ここも光速度 C を基準としてすべて規格化して考えていくので時間は秒で変わらないが、距離は光秒となる。

   宇宙船内微小経過時間 dτ とそれに対応する出発地点での微小経過時間 dt の間には、宇宙船の対出発地点の
   速度を v(τ) としたとき次の関係がある。
  dt=1/{ 1-v(τ)2 }1/2・dτ

    これにv(τ) = tanh(a・τ)を代入して積分すると
  ∫dt =∫1/{ 1-tanh2(a・τ) }1/2 dτ  
           =∫cosh(a・τ)dτ 
    従って宇宙船内で時間 τ が経過したときに、出発地点で経過する時間 t との間には次の関係がある。
    ∴ t=(1/a)・sinh(a・τ)   (秒)

  また、上の積分の式を見て分かるように、dt=cosh(a・τ) dτ となるので

  宇宙船で経過した時間τ において、出発地点から見た宇宙船との距離 L は下記のように計算できる。

  L=∫v(τ) ・dt=∫tanh(a・τ)・cosh(a・τ) dτ 
   =∫sinh(a・τ) dτ
       =(1/a)・cosh(a・τ)+const.

    τ =0のときL=0だから、const.=-1/aとなる。

    ∴L=(1/a)・{ cosh(a・τ)-1 } (単位:光秒)

 これらの式を用いて計算するツールを以下に用意してみた。
 宇宙船内経過時間τ (年)  定加速航法における(宇宙船内加速度計による)加速度(G)  
出発地点から観測した宇宙船の速度(光速) 出発地点から宇宙船までの距離(光年)  出発地点での経過時間 t (年)
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