2007/10/2更新:計算ツールに関する注意事項を追記

§7.空気抵抗(粘性抵抗)について(2007/08/16)

【1. 粘性抵抗】
§1で大気の抵抗には慣性抵抗と粘性抵抗の2種類があると述べた。

ここでは大気の粘性抵抗について簡単に説明する。
粘性抵抗は、物体の大きさを表す値をa、大気に対する物体の速度をv、空気の
粘性係数をηとすれば、その力 F は次のように表される。

  F ∝ ηav

粘性抵抗は物体が流体中をゆっくりと運動する場合に用いることができる。
大気であれば、無風状態の理想な場合を仮定して、雨やちりなどの小さくて軽い
粒子が落下する場合などが考えられる。
特に物体が球体の場合はストークスの法則として知られる下記の式が適用できる。

  F=6πηrv  (1)  (η:空気の粘性係数、r:半径、v:速度)

【2. 球状の物体の運動方程式】
ここで、質量 m、半径 r の霧滴が球状を保ち落下しているものとする。
また、重力加速度 gで一定としたときの霧滴の運動を検討する。
ある瞬間で霧滴の速度が v のとき、下方に向けて重力による力 mg、
上方に向けて空気抵抗の力 -6πηrvが以下の図の様に働く。





従って、この霧滴の運動方程式は下記となる。

 m(dv/dt)=-6πηrv+mg  (2)

ここで u=6πηr/m とおくと式(2)は下記のように簡単に表現される。

 dv/dt+uv = g  (3)  ( ここで u=6πηr/m で定数)


【3. 球状の物体の最終速度】

この霧滴に対する重力と空気抵抗が拮抗し、加速度 dv/dt = 0 となるまで落下
した場合は、式(3) から(または式(2)から) 簡単に最終速度(正式にはこの速度を
終端速度という)を求めることができて
   
  uv=g

従って、最終速度veは下記となる。
ve=g/u   ( u=6πηr/m)  または  ve=mg/(6πηr)  (4)

この球状の霧滴の密度をρとすれば、質量 m=(4/3)πρr3 であるから
式(4)を次のように変形できる。
ve=2ρg r2/(9η)   (5)

つまり、大気中を落下時の最終速度は霧滴の密度ρ、重力加速度 g に比例し、
霧滴の半径の二乗に比例することが分かる。

【4. 落下速度と距離の式】

  式(3)の運動方程式(微分方程式)は解くことができて時刻 t=0 で、速度は v=0とすると
 t 秒後の霧滴の落下速度は次式となる。
  v = ( g/u ) ( 1-e-ut)  (6)   ( u=6πηr/m)

 落ち始めて t 秒後の落下距離 L は
  L= ( g/u ) { t+(1/u)・e-ut-(1/u) }   (7)   (u=6πηr/m)

 式(7)の { } 内で式(6)の右辺に相当する部分で置き換えれば、落下距離は
 次のようにも表すことができる。

  L= ( 1/u ) ( gt-v )   (8)   (u=6πηr/m)


【球体に対する空気の粘性抵抗計算ツール】(2007/08/17) 霧状になった液体の大気中での落下運動を計算する。落下中の液滴は球状になっている ものとする。
液体の密度(g/cm3) 霧滴の半径(mm) 大気の粘性係数(N・m-2・s) 落下開始からの時刻(sec) 最終速度(m/s) 最終速度でのレイノルズ数Re 落下開始からの時刻における速度(m/s) 落下開始からの時刻における落下距離(m) このときの速度でのレイノルズ数Re (この計算ツールでの注意事項) 粘性抵抗の理論式だけで計算しているため、計算結果が妥当であるかをレイノルズ数の 計算結果で判定する必要がある。 大粒の雨滴などの落下速度などから判断して、レイノルズ数が150以下ならば計算結果が 妥当であると考える。本ツールでは最終速度でのレイノルズ数が150以上のときは粘性抵抗計算を行わない。 (2007/10/2追記) レイノルズ数 Reは大気密度ρ=1.23kg/m3、η:空気の粘性係数、r:霧滴の半径、 v:落下速度として次の式で表される。 Re=ρvr/η レイノルズ数は粘性抵抗と慣性抵抗の影響の度合いを見る目安であり、 いくつかのWEBサイトを参考にすると、Re<1のときは粘性抵抗、1<Re<1000で粘性抵抗と 慣性抵抗、Re>1000のとき慣性抵抗の影響を受けていると説明されている。
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