ランチェスターの第二法則(2005/10/08)

最近ランチェスターの法則については最近ビジネス書やWebサイトでよく見かけるようになった。
ランチェスターの第二法則についての式と応用は詳しく述べられているのだが、第二法則の式自体が
どのように導かれたのかについては空中戦の結果から導き出され、改良が加えられたというレベルの
記述しか見当たらない。原著の入手は大変そうなので、いくつかの仮定を設けてランチェスター第二法則
の式が導き出せないか検討してみた。

ここでランチェスターの第二法則について、市販本やWebサイトで紹介されている式を簡単に紹介する。

集団Xと集団Yが戦闘を行ったときに
集団Xについて戦闘前の兵力x1、戦闘後の兵力x2とし、
集団Yについて戦闘前の兵力y1、戦闘後の兵力y2とすると次の式に従う。

 (y12-y22)=E・(x12-x22)

これが市販本やWebサイトでランチェスター第二法則として紹介されている式である。
またEは集団Xの兵士の集団Yの兵士に対する強さであるというものである。

集団Xの兵力が1000、集団Yの兵力500で、集団Xと集団Yの兵士の強さが等しくE=1のとき、
集団Yが全滅するまで戦闘が続いたら集団Xの残存兵力はどれほどかという問題に対して

E=1、y1=500、y2=0、x1=1000を
前述の式に代入すると

 (5002-02)=1・(10002-x22)
∴250000=1000000-x22
∴x2=866 (集団Xの残存数)

つまり、兵士の強さは同じでも、集団Yは500の全兵力を失うのに対して、兵力1000の集団Xの
兵力損失は 1000-866=134 にとどまり、兵力の多いほうが圧倒的な勝ち方をするというものである。
そこから兵力二乗の法則とも呼ばれる。

さてここからは本題に戻って、ランチェスターの第二法則がどのようにして成立したかを検討して
みよう。
まずこの法則が空中戦から編み出されたという経緯から、戦闘機の集団Xと集団Yが戦闘を行う
状況で検討していく。尚、集団Xは味方、集団Yは敵とする。

ここで、集団X(味方)の戦闘機数をxとし、集団Y(敵)の戦闘機数をyとして、ある時点での味方の戦闘
機数の変化を-dx、敵の戦闘機数の変化を-dyとして次の式を仮定する。
(戦闘しているのでどちらの集団も戦闘機数が減少するのでマイナスの符号となる。)

 -dy=k・-dx     (1)

ここで、k は集団X(味方)の戦闘機が1機失われる間に、集団Y(敵)の戦闘機を k 機撃墜する割合、
すなわち敵機のキルレシオ(Kill Ratio)である。
例えば、味方の戦闘機が10機撃墜されたときに敵の戦闘機が15機撃墜された場合はキルレシオは
15:10=3:2となる。ここでは k = 3/2 = 1.5として扱う。

式( 1) で符号にマイナスをつけたままでは、わずらわしいので次の形で扱う。
  dy=k・dx  (2)

ところで戦闘が進むとお互いの兵力が変化していくが、味方機が多いと敵機の撃墜が増し、敵機が多いと
敵機の撃墜は減少するであろうから k は一定ではないとしてみる。
具体的には、k は味方機数 x に比例し、敵機数yに反比例するものと仮定してみる。

 ∴k ∝ x/y (3)

ここで比例係数としてEを用いると
   k=E・(x/y)  (4) 

ここで式 (4) を式 (2)に代入すると
  dy=E・(x/y) dx (5) 

式 (5)を変形し積分すると、次のように式 (8)を得る。
  y dy=E・x dx (6)

 ∫y dy=E∫x dx (7)

∴y2=E・x2 + const. (8)

味方の機数 x と敵の機数 y の機数がこの式に従い変化する場合を考えてみる。

この式に戦闘前の味方と敵の戦闘機数 x1 、 y1 を入れると
y12=E・x12 + const. (9)

次に、この式に戦闘後の味方と敵の戦闘機数 x2 、 y2 を入れると
y22=E・x22 + const. (10)

式 (9) から式 (10) の右辺同士、左辺同士を引くと、下記のように、まさにランチェスターの第二
法則の式となる。
(y12-y22)=E・(x12-x22)

ランチェスターの第二法則はこのように式 (8) から導かれたのではないかと思われる。

式 (1) と 式(4) から、強さにかかわる係数 E が何を意味するのかを考えてみよう。

 式(1) にて、 k は味方機一機の損失に対する敵機の損失数の割合、すなわちキルレシオと定義した。
一方、式 (4) から キルレシオ k は、戦闘中に味方機と敵機の比率 x/y が変動するため一定ではない。

ここで、味方機と敵機の数が等しい状態、すなわち x = y の場合を考えると、式 (4) から
 k=E となる。

従って E は敵味方が同数の勢力で戦闘に入った直後の味方(集団X)の戦闘機の
キルレシオを意味することになる。


第二法則計算ツール(2006/05/09) 味方と敵の初期兵力 (空中戦の場合は戦闘機数) と両集団の相対的な強さ E から戦闘後の両集団の兵力を計算する。 ここで、味方と敵の相対的な強さ E は 敵味方の両集団が同数の勢力で戦闘に 入った直後での味方の損耗数に対する敵の損耗数の比である。 例えば、味方と敵が同数の1000の兵力とする。戦闘に入った直後の短い時間で、 味方の兵力損失が10のときに、敵がその3倍の30の兵力を失うならば、E = 3 となる。
【計算1:ランチェスター第二法則の計算】初期兵力及び強さは自由に変えて計算 味方の初期兵力 敵の初期兵力 味方の敵に対する強さ E を とするとき 戦闘後の味方の兵力がのときの敵の残存兵力を推定する。 計算結果 戦闘後の味方の残存兵力は 戦闘後の敵の残存兵力は
(ホームへ) このページの式 (1) から式 (10) 及びそれらの式を構成する定数、変数の定義と表現 は筆者(Toshikazu Miura)に帰属します。
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