(2008/02/02 屈折率に関して追記)
電離層における電波の反射(2006/10/22)
 
 電離層のプラズマに電波が入射された場合を考えてみる。
 「電離層のプラズマ振動」のときと同じように、原子核はほとんど動かず、電子が動くものとする。
 電子の電荷を e とすると、入射される電波の電場 E によるプラズマ中の電子の運動方程式は
 
  mdv/dt=-eE  (1)
 
 ここで入射される電波の角周波数をωとして、電波の電場は
 
  E=E0・cos ωt  (2)
 
 式(1)を積分してみると
 mv = -e∫E0・cos ωt dt
 
  ∴v=-e/(ωm)・E0・sin ωt
 
 プラズマ内の電子N個の運動によって生じる電場に垂直な単位面積あたりの電流密度を ie
 とすると
 ie=-Nev=Ne2/(ωm)・E0・sin ωt   (3)   
  
 プラズマに入射される電波の電束電流密度を id とすると、真空誘電率ε0として
 id=d(ε0E)/dt=-ε0 ωE0・sin ωt  (4)
 
  プラズマ内の全電流密度 i はプラズマの電子による電流密度と入射される電波の電束電流
 密度の和として次のようになる。
 
 i =ie+id
    ={ Ne2/(ωm)-ε0ω } ・E0・sin ωt
    =-{-Ne2/(ω2m)+ε0 } ωE0・sin ωt
    =-{ ε0-Ne2/(ω2m) } ωE0・sin ωt   (5)
 
  式(4)の誘電率に相当する式(5)の部分(青太字)を比較すると、式(5)が表しているプラズマ内の見かけの
 誘電率εは下記のようになることがわかる。
  ε={ε0-Ne2/(ω2m)}

 誘電率εと屈折率 n の関係は n={ε/ε0}0.5であるから
  プラズマは下記のような屈折率を持つ媒質のようにふるまうものと考えられる。
 
  n=〔1-{Ne2/(ε0ω2m)}〕0.5   (6)
 
 ここで、電波の角振動数ωに対して、プラズマ角振動数 ωpとすると (当HPの「電離層のプラズマ振動」参照)
 ωp={ e2N/(mε0) }0.5
 
従って、式(6)の屈折率は、プラズマの角振動数ωpを用いると次のようになる。
  n=( 1-ωp2/ω2)0.5   (7)
 
 このようにプラズマは 1 よりも小さな屈折率をもつ媒質(注)であり、電波の角振動数とプラズマ角振動数が
 等しい場合は屈折率=0となる。さらにω<ωpの時は全反射されるものと考えられる。
 (注:一般に物質の屈折率は1より大きく、プラズマはその意味で珍しい媒質といえる:2008/02/02 追記)
 

 入力された電波の周波数(MHz)とその電波を反射する電離層のプラズマの電子密度を計算するツールを  以下に用意してみた。
 電波の周波数(MHz)  
この電波を反射する電離層のプラズマ電子密度は(個/cm3)以上の密度が必要
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