電離層のプラズマ振動(2006/08/20)
 
 隕石などが落下すると、通常は聞くことができない遠方のラジオ放送などが視聴できることがあるという。
 これは隕石が大気圏突入で燃え尽きるときに隕石中に含まれる金属などが原子核と電子に電離されて
 プラズマとなり電離層の電子密度が変化するために生じると考えられている。
 ここでは、下記のように2回に分けて電離層の電子密度を考えてみたい。
 1.電離層のプラズマ振動
 2.電離層における電波の反射
 
 今回は一回目として電離層のプラズマ振動について紹介する。
 電離層は地上80km以上の高空で、大気を構成する分子が太陽からの太陽風(太陽から飛んでくる
 陽子、中性子などの粒子)の衝突や高エネルギの光(紫外線)などによって、イオン化された層のことで
 原子核(電荷はプラス)と電子(電荷はマイナス)に分離された状態、すなわちプラズマ状態になる。
 このイオン化された大気の原子核と電子はばらばらな運動をしているが全体としては電気的な中性を
 保とうとする。
  
 
 ここで何らかの原因で電子と原子核が一様にずれた場合を想定する。一番単純な水素原子の場合は原子核
 は陽子一個であり、それでも陽子は電子のおよそ1800倍の重さがある。通常の原子核は複数の陽子及び
 中性子から成り、中性子自体も陽子よりもわずかに重いので、原子核はあまり動かず、電子のほうが動くもの
 と考えると、一次元の問題として扱うことができる。
  今、プラズマで電子が右に ⊿x だけ一様にずれた場合を考えると、左には同じく ⊿xだけ陽イオンが残るので
 分極した状態になる。
 
  
 電子の電荷を e 、プラズマの密度をNとすれば単位面積当たりの分極は、
 P=-eN⊿x  (1)
 
 このとき、プラズマ内に働く電場をEとすると
 E=-eN⊿x/ε0   (2)
 
  プラズマ内の電子には-eE の力が働くことになるので、運動方程式は次のようになる。
 (電子の質量を m、電子のずれ⊿xとする)
 
 m(d2(⊿x)/dt2)=-eE
 
 m d2(⊿x)/dt2=-e2N⊿x/ε0  (3)
 
 式(3)は単振動の式(補足)であるから、プラズマの角振動数 ωp は次のような式となり、
 電子密度 N だけで決まることになる。
 
 ωp={ e2N/(mε0) }0.5   (4)
 
  また、角振動数ωpとプラズマ振動数(=周波数)νとの関係は下記となる。
 ν=ωp/(2π)  (5)
 
 (補足) 
 ⊿x = A・sin ωptとすると、
  d2(⊿x)/dt2=-ωp2A・sin ωt=-ωp2⊿x
 
 これを式(3)に当てはめると下記のようになる。
  -mωp2⊿x = -e2N⊿x/ε0
 
 ∴mωp2 = e2N/ε0
 
 この式から、式(4)がすぐに求められる。
 
 2006/08/23追記
 式(3)、式(4)の物理的な意味は
 プラズマ全体は電気的に中性を保とうとするので、一様なずれが発生すると単振動を起こし、
 プラズマの電子密度で決まる振動数を持つ。
 
 
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