地球温暖化について(2007/02/12) 【太陽からの地球へのエネルギー】 太陽からの地球へのエネルギーについて次の図を基に説明する。 地球はほぼ球体なのでその半径をRとすると、 地球の表面積=4πR2 一方地球が受ける太陽光の投影面積は、地球を球と見た場合、大円になるので 地球が受ける太陽光の投影面積=πR2 また、地球は太陽から約1億5000万kmの距離にあり、太陽からこの距離での宇宙空間での太陽光エネルギー は1370W/m2(太陽常数)である。 さて、地球の表面積あたりの太陽光のエネルギーを考えてみよう。 地球の表面積に対して、太陽光を実際に受け取る面積は投影面積であるから、 表面積あたりの太陽光エネルギーは1/4(=(πR2)/(4πR2))に減少する。 また、地球は受け取ったエネルギーの30%を宇宙空間に反射しているので(この反射能のことをアルベドと いう)、太陽光のエネルギーはさらに30%減少する。 従って、地球が受け取る単位面積あたりの太陽光エネルギー平均値を Ie とすると Ie=1370W/m2×1/4×(1-0.3)=240W/m2 【一層大気モデル】 地球と宇宙空間との熱収支については、太陽からの熱エネルギーの入力、大気や地表との熱の出入りが あるので、ここでは最も簡単な一層大気モデルで宇宙、大気、地表の熱収支を考える。 大気は上層で宇宙空間、下層で地表に接するが、地球は年間を通して平均気温15℃を保っているので 大気が宇宙空間や地表からもらう熱と放出する熱の収支はゼロとみることができる。 もし大気の熱収支が増加すれば気候の温暖化、減少すれば冷却化が起こるだろう。 同様に地表が大気とやり取りする熱についても熱収支はゼロになる。 このように宇宙空間、大気、地表それぞれが受け取る熱と放出する熱が等しくバランスを保っている状態 を熱平衡という。 熱平衡にある温度Tの物体は、シュテファン-ボルツマンの法則で下記のエネルギー I を電磁波として 黒体放射(黒体輻射ともいう)する。 I =σT4 (σ=5.67×10-8) この法則に従い一層大気モデルでの宇宙空間、大気、地表が熱のやりとりを行う状態を示したのが 次の図である。ここでTa:大気の平均温度、Tg:地表の平均温度とする。 地球の一番外側の「大気と宇宙空間の境界」と「地表と大気の境界」の2つの境界で熱収支をみてみる。 【大気と宇宙空間の境界】 大気層に入射される太陽の熱エネルギー:Ieと大気から宇宙空間に放射するエネルギー:σTa4で 熱平衡が成立するなら、大気層と宇宙空間の境界を通した熱収支は下記となる。 Ie - σTa4=0 (1) ∴Ie=σTa4 ここで Ie=240W/m2であるから、Ta=255K(=-18℃)となる。 【地表と大気の境界】 地表に分配される太陽エネルギー:αIe (ここで0<α<1とする)、大気からの放射エネルギー:σTa4 地表から大気に放射するエネルギー:σTg4とする。 さらに地表からの熱は赤外線などの長波長領域なのでほとんど大気に吸収されるものとする。 地表と大気が熱平衡にあるならば、地表と大気の境界を通した熱収支は下記となる。 αIe+σTa4-σTg4=0 (2) 次に(1)と(2)から次式を得る。 (1+α)Ie = σTg4 (3) α>0なので(3)と(1)から σTg4=(1+α)Ie>Ie=σTa4 ∴Tg>Ta となり、地表面の平均温度Tgが大気の平均温度Taより大きくなる。(温室効果) 実際に地表面では平均気温は15℃(=288K)なので、地表面の平均温度Tgもそれと等しいとすれば、 (3)を用いて (1+α)・240 = 5.67×10-8・2884 ∴α=0.63、すなわち、太陽光のエネルギーで「地表に分配される」割合は約6割と計算される。 ここで仮定したモデルは最もシンプルな一層大気モデルの中の一例であり、実際の太陽エネルギー の大気や地表への分配は単純ではない。ここで「地表に分配される」という表現は大気中を通過する 太陽エネルギーのうち、直接地表に届く量という意味ではなく、直接地表に届く分とそれ以外も含めて 太陽エネルギーの一部が何らかの過程を経て、最終的に地表に分配される量という意味である。 【地球温暖化】 大気層に出入りするエネルギーを一層大気モデルの図で考えると、大気層に熱が蓄積されていく場合は 熱収支について次の不等式が成り立つ。 (1-α)Ie-2σTa4+σTg4>0 (4) Ie 及び α に対して Ta、Tg は 従属変数である。太陽光エネルギー I とアルベドが変わらないときは Ie(=240W/m2)は一定になる。上記の一層大気モデルで熱平衡を崩す要因はαの減少 (α=太陽光のエネルギーで「地表に分配される」割合)、またはIeの増加である。 地表面で熱が蓄積される場合はどうなるのだろうか? 地表と大気の境界についての熱収支は一層大気モデルの図から次の不等式が成り立つ。 αIe+σTa4-σTg4>0 (5) 大気層と地表面両方で熱が蓄積される場合は、式(4)と式(5)の不等式から、次の式が直ぐに出てくる。 Ie>σTa4 (6) この式の意味は、大気と宇宙空間の境界での熱収支が崩れて、地球が受け取る単位面積あたりの太陽光 エネルギー平均値Ieが大気から宇宙空間に放射される熱エネルギーを上回って増加していくことを示して いる。 最初に説明したように、本HPでは、Ie は、太陽からの熱エネルギー I とアルベドで決定し、その他の要因、 例えば人間の活動で排出される熱、火山活動などの熱は計算に入れていない。 これらの要因も当然厳密には含めて考えていく必要があるが、エネルギーのスケールから言えば太陽からの エネルギーがその他より圧倒的に多いのである。 ここで、太陽からの熱エネルギーが一定であるならば、アルベドが減少することで Ie が大気から宇宙への放射 エネルギーを上回るペースで増加する時に温暖化が進行することになる。 温暖化に関してアルベドがどう変化するかはWebで調べると次のように相反する立場の見解がある。 1)太陽光の熱エネルギーを大気中の気体が吸収するので、極地や氷河の氷が溶けてアルベドが小さくなり 、地球の単位面積あたりの太陽エネルギー Ie も増加する =>温暖化が進む立場 2)温度が上がると水蒸気の蒸発が活発になり、水蒸気の蒸発でできた雲による太陽光の反射の増加でアルベドが 増加するため、結局 地球の単位面積あたりの太陽エネルギー Ieが小さくなるように調節される =>温暖化は抑制される立場 その他の温暖化に関与するファクターとして注目されているものとして下記のようなものがある。 人為的に発生する熱エネルギーの増加(温暖化進行) エアロゾルの増加(温暖化抑制) 黒点活動と雲の発生の関連(アルベドの変動) 二酸化炭素などの保温効果ガスの増加(温暖化進行) 地球磁場の弱化による宇宙線量増加と雲量の増加(アルベドの増加と寒冷化) (ホームへ) このページの無断引用を禁じます。