2008/02/22 更新
1.衛星の公転周期、長径から天体質量を求める式を追加
2.タイトル変更 (部分的情報からの衛星軌道の推定→衛星軌道(その1))
 
衛星軌道(その1) (2006/05/05)
 
近地点または遠地点の情報から推定できる衛星の軌道について考察してみる。

1.人工衛星の軌道の式
 
 地球を周回する人工衛星の軌道は長円軌道となり、下記の式で表される。

 L/r=1+e・cos(ψ)  (1)

  L は長軸に垂直な方向の動径、e は離心率、ψは近地点と地球と衛星がなす角度である。
 離心率 e は長円がどのくらい扁平であるかを示す数値であり、e=0で円、e=1で無限に長い長円、
 すなわち放物線になる。

 
 ここで近地点の動径 r1 、遠地点の動径 r2 とすると
 近地点の場合、ψ=0なので式(1)から
 L/r1=1+e・cos(0)=1+e   (2)
 
 遠地点の場合は、ψ=πなので式(1)から
 L/r2=1+e・cos(π)=1-e   (3)
 
 式(2)と(3)を足すと、近地点r1と遠地点r2から L を求める式が得られる。
 L・(1/r1 + 1/r2)=2  
 
  ∴L=2/(1/r1 + 1/r2) (4) 
 
 さらに式(4)を(2)または(3)に適用すれば、
近地点の動径 r1、または遠地点の動径 r2から離心率 e を求める式が直ちに得られる。
  e=(L/r1)-1=1-(L/r2)  (5)  

   ここで長円軌道の場合、離心率 e < 1であり、これを満たさない場合は近地点または遠地点の動径
 の情報に誤りがある。
 

2.近地点や遠地点に関する運動
 
  長円軌道の式(1)を時刻 t で微分してみる。 
 d/dt(L/r)=d/dt(1+e・cos(ψ))
∴dr/dt=(e/L)・r2sin(ψ)・(dψ/dt)
 
近地点(r1,0)、遠地点(r2,π)では、dr/dt=0となり、物体の速度ベクトルは動径に垂直になる。
このことは、近地点、遠地点の速度がそこでの動径と角速度の積に等しくなることを意味する。
近地点での速度 v1、遠地点での速度 v2として、そこでの角速度をω1、ω2とすれば
 v1=r1・ω1、 v2=r2・ω2
 
ケプラーの法則から、衛星の面積速度Sは軌道上で一定になるので近地点と遠地点で等しい。

∴S=v1・r1/2=v2・r2/2   (6)

また、エネルギー保存則から、衛星の軌道上の各位置でのエネルギー(運動エネルギー+位置
エネルギー)の大きさは等しいので、近地点と遠地点でのエネルギーも等しくなる。
人工衛星の質量を m 、重力加速度 g 、地球の半径 R とすると近地点と遠地点の
エネルギーは以下のように等しい。
1/2・mv12+mgR2(1/R-1/r1)=1/2mv22+mgR2(1/R-1/r2)=一定
 
∴1/2・(v12-v22)-gR2(1/r1-1/r2)=0   (7)
 
ここで式(6)から、
1/r1=v1/(2S) (6-1)
1/r2=v2/(2S) (6-2)
なのでこれを(7)に代入して、変形すると
 
{(v1+v2)-gR2/S}(v1-v2)=0 (8)
 
長円軌道で近地点の速度と遠地点の速度では、v1>v2であるから、式(8)は
(v1+v2)-gR2/S=0 
∴gR2/S=v1+v2  (9)   
 
式(9)と式(6-1)、(6-2)を組み合わせれば
gR2/(2S2)=1/r1+1/r2 (10)  
 
式(4)から   L=2/(1/r1 + 1/r2) であるから、式(10)は次のようになる。
 
L/(S2)=4/gR2 (11)
 
 また地球の質量 M、衛星の質量mとして、万有引力の式から次の関係があるので
mg=GMm/R2  (ここでg;重力加速度、G:万有引力定数、R:地球の半径)
∴GM=gR2 (12)
 
従って式(11)と式(12)から
L/S2=4/(GM)  (13)
 
尚、ケプラーの第三法則から衛星の公転周期 T は以下の式になる。
長径 OA=( r1+r2 )/2 であり
T2=(π2L/S2)・OA3  (14)
 
式(13)を式(14)に適用すれば、衛星が周回する惑星の質量Mを含むケプラーの第三法則の式が得られる。
(衛星を惑星に、惑星を恒星に見立てた場合もこの式が適用できる。)
T2= { 4π2/(GM) } ・OA3 
 
ゆえに
M= ( 4π2/G ) OA3/T2   (15) 
 
さて、太陽と地球のおおよその質量比を式(15)で求めてみよう。
太陽の質量をM1
地球が太陽の周りを回る公転周期T1=365日
地球と太陽の中心間の距離 OA1/2=15000万km
 
地球の質量をM2
月が地球の周りを回る公転周期T2=27日
月と地球の距離 OA2/2=38万km
 
式(15)から
M1/M2=(OA1/OA2)3・(T2/T1)2
 
M1/M2={(15000×2)/(38×2)}3・(27/365)2=336561.8
 
従って太陽の質量が地球の質量の33万倍あることが分かる。
 
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